2009年6月30日

現実を観る目

近くのラカンに住む尼さん達が家に寄ってくれました。ブータンのテレビがついていたので、2人して色々話しながら見入っていました。どうぞ座ってみて下さい、といっても遠慮しています。私はその間にお茶を用意しましたが、これも強く遠慮されてしまいました。結局、10分くらいでしょうか、立ちながらテレビを夢中になって見ていました。テレビのない生活をしているので珍しいのでしょうね。そういえば、タシさんのお母さんもテレビを知らない生活なので、クスクス笑いながらずっと見ていました。テレビの影響は大きいだろうなぁと感じます。ブータンの田舎で、まだ電気が通っていないところもありますが、電気がある家庭ではまずはテレビを買っていることでしょう。そうなると、そこには都会で暮らす人たちの様子が映し出されます。ブータンだけではなく、インドや他の国で暮らす人々、きれいな家やたくさんのCMには見たこともないような商品が山ほど出てきます。それらを小さな頃から見て、かつ自分の親たちは農業で苦労しているのを見ています。人は欲望で生きる動物なので、こういった背景から都会に出て暮らしたい、と思うのは必然でしょう。でも都会には仕事はありません。田舎でどんなに成績が良くっても、ブータンの都会で仕事をするには大卒出のエリートしかきちんと就職はできません。海外の大学に行ける家は、学費が必要になるので元々家柄がよく、余裕のある家でなければ行くこともできないのです。成績優秀で国が押してくれる人もいますが、数は限られます。情報化社会で、知ってしまったからには都会での暮らしを夢見てしまいます。なので、数が益々増えるので悪循環です。普通、仕事がなくて収入がなければ、住む家がないので実家に帰るなどするしかありませんが、ブータンの場合は、親戚がいればそこに居候するのが当たり前なので、職がなくとも生きていけてしまうことろも、ある意味問題なのでしょう。妹も今が学校が終わってプラプラしています。就職難からアルコールやドラッグに走ったりする人もいるようです。ブータンはいま世界中から注目されています。それは先進国が失ってしまった“先祖の叡智”や“心の豊かさ”といった文化を国全体で守ろうと法律化し、国の指針にしているからです。GNHという言葉と発想は先進国はとても新鮮に感じているのだと思います。ただ叡智を大切にしつつも、現実に生きる目も持たなければ、前述のようにただ都会に出て仕事もなくプラプラ生活になってしまいます。学歴社会は益々もってひどくなり、弊害が子供に出てくることでしょう。ブータンはいま大きく変わりつつあり、変わる必要がありそうです。生きていくためにはもっと仕事に対しての価値を変えていかなければ、いつまでたっても国王が助けてくれると思っていて精神的にも現実的にも自立はできないのです。これらを解決させるために国はサービスの量を増やし就職マスを増やしたり、個々が手に職をつけるための職業訓練的なことを広くしていく必要があるでしょう。ブータンを外から見た時には分からなかった現実が見えてきました。国をリードする大臣たちはやはり元々エリートな家柄の出身が多いことでしょう。こんな面は日本に似ているような気もします。リーダーたちがブータンの現実問題を解決する能力と意識があるかが、いま注目すべきところのように感じます。

(写真:これが唐辛子です)

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